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「原子力の平和利用と核不拡散」について

平和利用という言葉に隠された軍事目的

日本の原子力の研究開発及び利用は、平和目的に限って行うことが法で定められています。しかし実際は、原発の使用済み核燃料のウランとプルトニウムで核兵器の製造が可能*1,2,3,4,5,6,8,9,20,21,23であり、日本も他の全ての国と同様、平和利用というのは表向きで、裏の目的は核武装である*8,9,20,21と言われています。


核を求める日本

日本が核武装するというと驚かれるかもしれませんが、国の首脳部は決して「核兵器反対」ではないのです。たとえば、核兵器について触れられた外務省の極秘文書が暴露されています。

"当面核兵器は保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともにこれに対するせい肘(=抑制)を受けないよう配慮する。又核兵器一般についての政策は国際政治・経済的な利害得失の計算に基づくものであるとの趣旨を国民に啓発し、将来万一の場合における戦術核持ち込みに際し無用の国内的混乱を避けるように配慮する。*8" 
つまり、日本の核兵器製造能力の保持を、国際政治・経済的理由であるとして国民を欺く、という内容です。これが「エコロジー」「安い」と触れ込んだ原子力発電の正体です。現に、鈴木達治郎委員長代理は、原発でできるプルトニウムで核兵器を作る研究(出典)を発表しています。

日本の政治家の中には核兵器を持つことに肯定的な人、核保有論者*21がいるのも事実。安倍晋三元首相*7石原慎太郎都知事*4,5などは非核三原則を無視するような発言をしており、今まで原子力政策を推し進めてきた自民党に至っては、政調会長(公約や政策立案をする機関の長)石破茂「核を作れる原発を抑止力とするべき」と公言*1しています。


原発と日米同盟
- 安保条約が絶対条件 一貫して米国支配下に置かれる日本の原子力政策

日本の原発の導入は冷戦期のアメリカの核戦略の一環*19,22として始まりました。第五福竜丸事件(1954年、米軍の水爆実験で日本漁船「第五福竜丸」の乗組員23人全員が被ばくした事件)で全世界から非難を浴びたアメリカは、この危機を脱するため、「日本に実験用原子炉を提供する」との提案を打ち出しました。これには「原子力の平和利用」をアピールすることで、ロシアによるプロパガンダへ対抗し、日本の反核感情を押さえるなどの狙いもありました。日本では「自主・民主・公開」の原子力研究3原則が定められました。日本の原子力開発の動きは米国の世界原子力戦略に呼応しており、原料となる濃縮ウランも原子炉も米国産。「自主開発」は当初から建前となっていました。政府関係者の間では、原発はエネルギーではなく安全保障の問題として位置付けられていました。

現在でも原発は日米安保問題と密接に絡んでいます。1988年に批准された現行の日米原子力協定に“日米安保条約の破棄など米国の国家安全保障を脅かす事態となる場合、米国は原子力に関して日本に認めた諸権利をすべて停止することができる”との規定*19が入れられました。日本が安保条約の破棄を通告すれば、協定上の権利が奪われ、原発の稼働に重大な支障が発生する - 原発に群がる「原発利益共同体」の構成員にとって、あってはならないことです。また、「六ケ所村再処理施設」や「高速増殖炉もんじゅ」などの危険な再処理施設の運転に米国の同意が与えられました。これは、技術的に未完成だとして米国自身は行わず、日本を「実験場」とすることを意味します*19。さらに、濃縮ウランの輸入は、当初は100%、現在でも7割以上を米国からとする制約が課されています*19。このように、日本の原子力政策は一貫して米国支配下に置かれてきました。

日米原子力協定の交渉では、「原子力の平和利用」の名の下に、東京電力や関西電力の役員が政府の専門職員となるなど、電力業界が全面的に関与してきました。また、東電会長勝俣恒久、元会長荒木浩が、政府の防衛大綱の有識者会議座長を務めるなど、業界トップが安全保障政策への関与を続けてきました*19


平和利用という仮面

原子力委員会委員たちの「原子力の平和利用と核拡散防止の両立を目指す」という言葉について考えます。「両立」という言葉は、通常、同時に成立し難いことを成り立たせるときに使います。つまり、「原子力発電と核拡散防止は同時に成立し難い」という認識が根底にあります。近年、日本政府はしきりに原発の輸出を図っていますが、これは核開発技術を売ることでもあり、また、輸出相手国の原発利用がその近隣諸国に脅威を与え、それらの国々にも核開発の動機を与えることにもなります。さらに、日本が米国から買った技術を転売しようとしているように、将来、輸出相手国がその技術を他国へ伝える危険もあります。すなわち、連鎖的核拡散になり得るのです。そうと分かった上で、それでも世界に核をばら撒き、目先の金儲けようというのが日本の国家戦略なのです。ちなみに、前出の鈴木達治郎委員長代理は、軍民両用技術の輸出管理政策に関する研究(出典)も行っています。

ここで、作家・広瀬隆氏の言葉を引用します。
- 私たちの世代から、最後に言い残しておきたいことが一つあります。
この原子力産業が、1953年12月8日に、アメリカのアイゼンハワー大統領が「原子力の平和利用(Atoms-for-Peace)」を宣言して始まった歴史を決して忘れないでほしいということです。このレトリックに全世界が欺かれてきました。原水爆を生み出す核兵器産業が今日まで連綿と生き続けられたのは、この文句のためです。アイゼンハワーがなぜ「平和」の言葉を使ったかと言えば、その正体が、人間を殺すための軍事技術だと知っていたからです。一瞬の閃光と熱で、大量の人間を地上から抹殺する技術です。ウランの採掘から濃縮、そして発電後にその燃料が行き着く先は、原爆材料プルトニウムの抽出という最後の目的地であって、今、日本全土の原子炉に潜在している危険性です。その正体を隠すために生まれたのが、平和利用という仮面なのです。 (中略) 六ヶ所再処理工場と高速増殖炉「もんじゅ」の目的地も、そこにあるのです。これは、平和どころか、悪魔の所業です。人間と共存させてはならない技術です。 -
(広瀬隆・明石昇二郎 「原発の闇を暴く」より)


核は国を守るのか

原子力利権、日米関係のほかに国が原発に固執する理由は、前出の石破茂が「核を作れる原発は抑止力」と言ったように、「国防」の為だとの主張もありますが、原発の利用は国防の手段として本当に適切なのでしょうか。「浜岡原発が逝ったら首都圏は壊滅する」と言われますが、もしそこにミサイル等が打ち込まれたらどうなるでしょうか。攻撃する側から見れば原発は格好の標的です。現に各国政府同様、日本政府もそれに危機感をもっており、以前から原発への攻撃をシミュレーション*10しています。ドイツでは、政府主導で極秘のフライトシミュレーション実験を行い、原発への空からの攻撃の可能性を肯定*14しています。また近年、福島、イラン、フランスなど国内外の原発へのサイバー攻撃*14,15が相次いでおり、2011年11月、日本政府は原発へのサイバー攻撃を含む原発テロ攻撃対策*16を進める方針を決めましたが、この時点ですでに対策が後手に回っています。

日本は小さい国土にもかかわらず世界第三の原発大国であり、日本各地に17箇所54基、近年完成予定のものが4箇所14基もあります(2010年3月末時点 出典)。しかも日本列島は今、地震の活動期で、近年更なる大震災の可能性があると国内外の多くの専門家にも指摘されていながら、いくつもの原発が断層の真上や津波の起こる海岸沿いにあるのです。福島の事故で最悪のシナリオとして指摘されたのは、福島第1がダメになれば福島第2もダメになる。福島第2もダメになったら、今度は東海第2原発もダメになる、という悪魔の連鎖*17です。このシナリオの引き金とされる4号機の使用済み核燃料の崩壊は、工事ミスと壁のずれという2つの偶然*18に救われました。日本は、いつ爆発してもおかしくない連鎖状核爆弾を何十個も、自ら進んで体中に付けているのです。


元々軍事的理由で原発は作られましたが、国中原発だらけになった理由は、国を含む原子力利益共同体の金儲けによるところも大きいのでしょう。日本のこうした裏事情を苗床に、表からは見えにくい利権の癒着構造が蔓延ったのです。悲惨な事故が現実となりましたが、今が、国、そして各界の人間の個人の責任を明らかにし、罪を裁き、日本を変える、最大の、ともすると最後のチャンスでもあるのです。


出典

*15 イラン原発を襲ったサイバーテロ
 NEWSWEEK 日本版 2010年10月06日
*16 原発へのサイバー攻撃対策 政令改正へ
 読売新聞 2011年11月15日
*22 原発導入のシナリオ ~冷戦下の対日原子力戦略~
 NHK 現代史スクープドキュメント 1994年3月16日
*23 「原子力の憲法」こっそり変更 「我が国の安全保障に資することを目的として」
塩崎恭久衆院議員「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」

 東京新聞 2012年6月21日