原子力安全・保安院が行う安全規制を監視する機関。年間予算8億4000万円(10年度)。
傘下に専門審査会や部会を多数抱え、
○ 国会の同意を得て内閣総理大臣により任命される5名の委員
○ 幅広な専門分野の有識者から構成される審査委員、専門委員(約400名)
○ 約100名の事務局
により構成される。[組織図]
普段は安全審査や原子力防災の指針を定めるなどが仕事だが、事故時には、緊急に専門家集団を設けて首相に技術的助言をすることが原子力災害対策特別措置法で定められている。
目次 ・ 福島第一原発事故における刑事責任(業務上過失致死傷罪) ・ 長時間の全電源喪失は"想定外" ・ SPEEDIの情報隠し ・ 汚染水処理 「知識を持ち合わせていない」 ・ 子どもに年間20ミリシーベルト 「差し支えない」 ・ その他の福島第一原発事故への対応 ・ 安全規制の空洞化 ・ その他 |
2011年3月11日、東電が保有する福島第1原発で、安全対策の不備(東電の主張は想定外の津波)により77京ベクレル(2011年6月6日公表値)の放射性物質の放出を伴う重大事故を発生させた。これにより現場作業員数名と、近隣の住民ら少なくとも573人以上を死亡させている。
さらに、10万人以上の近隣の住民を大量の被曝に晒し、避難民にした。今後、こうした被曝者の中から、甲状腺がん等の健康被害が発生する可能性が極めて大きい。
また、放出された放射性物質が地震・津波被害の救援活動を事実上阻み、被害を拡大させた。
事故により同原発の半径20km圏内の立ち入りが禁止されたため、膨大な数の住民の土地・生活を破壊したことに加え、同圏内にあった企業や、地元の第一次産業全般の経済活動を停止に追い込み、事業を廃業、または存亡の危機に陥れた。農家や避難生活を苦にした人の自殺も急増した。
東電・国の責任者らがルポライター・明石昇二郎、作家・広瀬隆によって業務上過失致死傷罪等で、また有志の市民団体に公害罪で告発されている。
- 被告発人らの下記所為は、刑法第211条(業務上過失致死傷罪)に該当する 告発状「東電用」 告発人 明石 昇二郎、広瀬 隆 2011年7月8日 PDF
- 放射能汚染反対の有志、東電を公害罪で告発 NNN 2012年1月24日 映像
- 第一原発周辺の市町村、避難後に死亡した高齢者らは少なくとも60人以上 朝日新聞 2011年5月7日
- 災害関連死、573人認定…福島の13市町村 読売新聞 2012年2月4日
- 福島第一原発事故、現場勤務で死亡は6人、東電社長の葬儀出席ゼロ オルタナ 2012年1月25日
- 「原発さえなければ」酪農家が自殺 福島 日テレNEWS24 2011年6月14日
- 福島県内 自殺者2割増 4~6月 毎日新聞 2011年7月9日
- 東電「想像を超えた地震と津波が原因、原発建設は法令に基づき適切に行われてきた」原発事故慰謝料請求に反論―東京簡裁 時事通信 2011年5月19日
1990年、原発の安全設計審査指針策定時、原子力安全委員会は、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧または非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮しない」としていた。全電源喪失は起させないという方針で、地震や津波の規模を予測し、安全対策を立てていたという。
2006年、国会で電源喪失による最悪事態や水素爆発の危険も指摘されたが、対策は為されなかった。
2011年の大震災で起こった全電源喪失について、松浦祥次郎元原子力安全委員長は、「何もかもがダメになるという状況は考えなくてもいいという暗黙の了解があった。隕石の直撃など、何もかもに対応するのは無理だ」と釈明。
斑目春樹委員長は、浜岡原発訴訟で重要機器の複数同時機能喪失を想定していない理由は「割り切らないと設計できない」からだと発言。また、福島第一原発事故に関する報道番組の取材に対し、"全電源喪失を考慮する必要なし"という国の安全指針は「知らなかった」と回答。
- 原発における長時間の全電源喪失は、日本では想定外 Wikipedia 原子力安全委員会
- 斑目委員長、浜岡原発訴訟で重要機器が複数同時に機能喪失することを想定していない理由を問われ「割り切らないと設計ができなくなる」 浜岡原発を考える静岡ネットワーク
- 斑目委員長「事故は人災」と認める "全電源喪失を考慮する必要なし"という国の安全指針は「知らなかった」 日本テレビ 2011年06月15日
文部科学省の委託事業として原子力安全技術センターが運営していた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」について、福島第1原発事故後に2千枚以上の拡散試算図が作成されていたが、3月23日と4月11日の2枚しか公表されなかった。
この試算図については、本来事業を所管する立場の文部科学省からではなく、3月23日に実際の環境放射線モニタリング結果から逆推定をおこなった試算結果を原子力安全委員会が公表。SPEEDIは累計約128億円、2010年度も約7億7千万の予算を計上しているシステムで、データは自治体と共有することになっており、自治体もシステム整備費などを支出している。この事故において、関係自治体は最も必要な時期に情報を入手できなかったことになる。
2006年の北朝鮮の核実験や2000年の三宅島噴火の際には、積極的にSPEEDIの情報公開がされていた。
2011年3月の事故勃発から数カ月を経た汚染地域の環境調査結果では、SPEEDIの予測データが汚染実態とほぼ一致するほど高精度だったことが証明されたが、2012年1月18日、原子力安全委員会は、莫大な税金と30年以上の歳月をかけたこのシステムを、「信頼性が低いため今後は使わない」と発表。
- SPEEDIの拡散試算図2千枚、公表は2枚 安全委 共同通信 2011年4月18日
- SPEEDIの情報隠し 衆議院 予算委員会 2011年5月16日 映像
- SPEEDI 莫大な税金で30年以上かけて開発 予測が汚染実態とほぼ一致するほど高精度だったことが証明されたにも関わらず 「信頼性が低いため今後は使わない」 安全委 PRESIDENT Online 2012年2月9日
班目春樹委員長は福島第一原子力発電所の建屋に溜まった高放射線量の汚染水処理について、「知識を持ち合わせていないので、東電と原子力安全・保安院にしっかりと指導をしていただきたい」と発言。(保安院は院長をはじめ多くの文系事務官らで構成されており、専門性の低さが指摘されている。)
- 原子力安全委員長 放射線汚染水への対応、安全委では「知識を持ち合わせていない」 朝日新聞 2011年4月5日
2011年5月、衆議院特別委員会で、子どもを含めた被曝の年間積算線量限度を20mSvとした措置に対し、原子力安全委員会の久住静代委員は「1~20mSvで学校が開かれることは、差し支えない」と助言したと答弁。この年間20mSvという基準には、食品や水からの内部被ばく線量が含まれていない。日本の法律では一般人の場合は年間1mSvが上限(注:原子力推進団体であるICRPの基準値)である。原発労働者が白血病を発症した場合、年間5mSvでも労災が認められる。つまり、年間5mSvで白血病になることを国が認めている。
この措置に対し、原発対応の小佐古内閣官房参与が会見で泣きながら辞意を表明、撤回を求める数多くの市民活動や医師会からの声明もあったが、2012年6月現在も未だに撤回されていない。
- 年間20mSv問題・久住静代答弁「1~20mSvで学校が開かれることは、差し支えない」 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 2011年5月20日 映像
- 子供の外部被ばく上限が「20mSv」に決まった経緯 - 対象学校数を3分の1にする目的 東京新聞、ブログ ざまあみやがれい! 20ミリシーベルト 2012年04月18日
- ウクライナでは5mSv基準、子どもに対してはさらに低い たね蒔きジャーナル 神戸大学大学院教授 山内知也 2011年12月22日
- ウクライナの移住基準と都内の空間放射線量 ブログ New World 2011年12月22日
- ウクライナにおける事故影響の概要 ドミトロ・M・グロジンスキー ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所
- 原発対応の内閣官房参与 小佐古敏荘・東大教授(放射線安全学) 「この数値を小学生などに求めることは許し難い」 泣きながら辞意表明 NHK 2011年4月29日 映像
- 代谷誠治安全委員 3月23日の時点で福島原発の事故が「チェルノブイリ級」と認識 「評価は保安院の役割」 日刊ゲンダイ 2011年4月14日
- 原子力安全委員会 震災後の会議は5分 フジテレビ 映像
- 「ヨウ素毎時10兆ベクレル」未公表-文科省、安全委連携不足 時事ドットコム 2012年4月3日
- 一ヶ月以上経過後、原子力安全委員が初の福島入り 県知事は「なぜ、いまごろ」と不快感あらわ 産経ニュース 2011年4月17日
- 原子力安全委員会 福島第一原子力発電所事故への対応 Wikipedia
また、鈴木篤之元委員長は、安全委員会委員長の任期中に審査対象の日本原子力研究開発機構の理事長に応募し、就任した。
- 推進官庁と規制側が一体化 エネ庁と保安院、安全委の間で人事異動 AERA 2011-4-25号
- 規制側からもんじゅ推進役に 鈴木篤之安全委員会委員長、任期中に審査対象となる同機構の理事長に応募 毎日新聞 2010年8月18日
- 規制する側とされる側が同居 原発大手企業と霞が関 ズブズブの証拠を入手 週刊現代 2011年6月28日
- 原発マネー 安全基準検討委員にも 5年で3347万円 関連業界が寄付 しんぶん赤旗 2012年4月11日
- 原子力安全委員会は国民の前に立て 朝日新聞 2011年3月25日
- *10原子力安全委員会の委員長・委員らの年俸は約1785万円 週刊現代 2011年05月16日
- 官僚と電力会社は、自分たちに都合のいい学者を出世させて、原子力安全委員長などの重要ポストに据える。原子力安全委員長は「原子力行政に絶大な権力を持っていて、原子炉メーカーが視察を受ける際、かつては工場の入り口に赤じゅうたんを敷いた」 週刊現代 2011年5月16日